雑学

針供養の由来や方法を詳しく解説!主な寺社も紹介

近年、家庭で裁縫をする機会は減っています。

しかし、ボタンの付け直しなど、ちょっとした裁縫は今でも生活の中で必要な場面があります。

裁縫に使う針は消耗品です。

使い続けると曲がったり折れたりして使えなくなることもあるでしょう。

そんな役目を終えた針に感謝を込めて供養する行事が「針供養」です。

裁縫に関わる方や、服飾の勉強をしている方なら聞いたことがあるかもしれませんが、具体的な内容については知らない方もいるかもしれません。

ここでは、針供養の由来や行われる時期、供養の方法について詳しく解説します。

さらに、全国で針供養が行われる主な寺社も紹介しますので、使えなくなった針を持て余している方は、この機会に参加を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

針供養とは?

針供養とは、長年使用した針に感謝の気持ちを込め、供養する日本の伝統的な行事です。

古くから裁縫技術の向上を願う場として大切にされてきました。

現在も各地の神社やお寺で行われており、和裁や洋裁に関わる方々にとって重要な機会となっています。

 

針供養の意義

裁縫道具の一つである針は、長く使ううちに曲がったり折れたりします。

針供養では役目を終えた針を供養し、感謝の気持ちを示します。

裁縫を学ぶ学生や、服飾業界に携わる方々にとっては、技術向上を願う意味も含まれた大切な行事です。

 

針供養の起源

針供養の発祥については明確な記録がないものの、中国の古い風習が由来であるとも言われています。

日本では平安時代には既に行事として根付いており、江戸時代には職人や家庭の主婦たちに広まりました。

折れたり錆びたりして役目を終えた針に感謝し、豆腐やこんにゃくに刺して供養する風習が広まったのもこの時期です。

 

 

針供養の方法

寺社での供養

神社やお寺に使えなくなった針を納め、供養をお願いする方法が一般的です。

寺社によって異なる供養方法があります。

参拝者が豆腐やこんにゃくに針を刺して祈願する形式や、祈祷を受ける形式などがあります。

事前予約や郵送受付が必要な場合もあるため、詳細は事前に確認しましょう。

 

自宅での供養方法

豆腐やこんにゃくを用意し、古い針を刺して供養します。

仏壇や神棚に供えた後、庭に埋めて清めの塩を振ることで供養を完了させます。

豆腐やこんにゃくは柔らかく、長年硬い布地を縫い続けた針に「最後は柔らかい場所で休んでください」という思いを込めるために用いられています。

 

針供養を通じて日々の道具への感謝を形にすることで、より良い裁縫の道が開けることでしょう。

 

針供養の日程

針供養は一般的に「2月8日」または「12月8日」に行われます。

東日本では2月8日、西日本では12月8日に行われることが多いですが、地域によって異なる場合もあります。

一部の寺社では両日とも行事を行うこともありますが、基本的にはどちらか一方で行われるケースが主流です。

 

これらの2つの日付は、古来より「事八日(ことようか)」と呼ばれ、大切な節目として扱われてきました。

物事を始めたり終えたりする日であり、感謝を込めて道具をいたわる風習が根付いています。

その代表的な行事が針供養です。

この日には針仕事を控え、厳かに道具への感謝を表す文化がありました。

 

地域による違いの理由

「事八日」の2日間は「事始め」と「事納め」としても知られています。

言葉の「事」は祭りを意味し、コトノカミという神様を祀る行事です。

地域差が生じる理由は、コトノカミを「年神様」と「田の神様」のどちらと捉えるかによります。

・年神様を祀る場合:12月8日が事始め、2月8日が事納めとなります。
・田の神様を祀る場合:2月8日が事始め、12月8日が事納めとされます。

このような違いが、地域ごとに針供養の日付が異なる理由になっているのです。

 

 

針供養が行われる主な寺社

針供養は、裁縫の守護神とされる淡島神(あわしまのかみ)を祀る神社や寺院を中心に、日本各地で行われています。

ここでは代表的な寺社をご紹介します。

参拝の際は、事前に各寺社の公式情報を確認することをおすすめします。

 

淡嶋神社(和歌山県和歌山市)

Saigen Jiro, CC0, ウィキメディア・コモンズ経由で

全国の淡嶋神社の総本社で、裁縫の守護神として信仰されています。

毎年2月8日に行われる針供養では、納められた針を本殿でお祓いし、針塚に収めて塩をかけて供養します。

所在地 和歌山県和歌山市加太118
アクセス 電車:JR、南海和歌山市駅から南海加太線乗換え加太駅下車 徒歩約20分
車:阪和道泉南ICから45分
公式サイト https://www.kada.jp/awashima/

 

浅草寺 淡島堂(東京都台東区)

江戸時代に建立された淡島堂では、毎年2月8日に針供養が行われます。

多くの女性が集まり、大きな豆腐に針を刺して感謝の意を示す姿が見られます。

所在地 東京都台東区浅草2-3-1
アクセス 東武スカイツリーライン:浅草駅より徒歩5分
東京メトロ銀座線:浅草駅より徒歩5分
つくばエクスプレス:浅草駅より徒歩5分
都営地下鉄浅草線:浅草駅A4出口より徒歩5分
公式サイト https://www.senso-ji.jp/guide/guide09.html

 

正受院(東京都新宿区)

東京和服裁縫協同組合が針塚を建立したことを契機に、毎年2月8日に盛大な針供養が行われています。

甘酒の献上、納針の儀、華やかな花見堂行列など、多彩な催しが特徴です。

本堂では大法要が行われ、参拝者も大豆腐に針を刺して供養します。

所在地 東京都新宿区新宿2-15-20
アクセス 東京メトロ丸ノ内線 新宿御苑前駅から徒歩6分
都営地下鉄新宿線 新宿三丁目駅から徒歩4分
公式サイト https://www.kanko-shinjuku.jp/spot/-/article_371.html

 

荏柄天神社(神奈川県鎌倉市)

毎年2月8日に針供養が行われ、鎌倉の特注絹ごし豆腐が準備されます。

参拝者は柔らかな豆腐に針を一本ずつ刺して供養します。

所在地 神奈川県鎌倉市二階堂74
アクセス 電車:JR鎌倉駅より京急バス「鎌倉20 大塔宮」行「天神前」バス停下車3分
車:横横道路朝比奈インターより10分
公式サイト http://www.tenjinsha.com/

 

若宮八幡社(愛知県名古屋市)

名古屋の総鎮守である若宮八幡社では、毎年2月8日に古い針を供養します。

神御衣神社と針塚で神事が行われた後、参拝者は豆腐やこんにゃくに針を刺します。

神御衣神社は縁結びのご利益でも知られており、裁縫上達と恋愛成就が結びつく特別な場所とされています。

所在地 愛知県名古屋市中区栄3-35-30
アクセス 鶴舞線大須観音駅 徒歩7分
名城線矢場町駅 徒歩5分
公式サイト http://www.wakamiya.or.jp/

 

太平寺(大阪府大阪市)

十三まいりで有名な太平寺では、毎年2月8日に針供養が行われます。

針塚の他にも筆塚や茶筅塚があり、道具に感謝して技術向上を祈る風習が続いています。

所在地 大阪府大阪市天王寺区夕陽丘町1-1
アクセス 地下鉄谷町線四天王寺前夕陽ケ丘駅下車①②出口すぐ
公式サイト https://www.taiheiji.com/

 

法輪寺(京都府京都市)

平安時代から続く針供養が有名です。

毎年2月8日と12月8日の両日に行事があり、僧侶による読経、日本舞踊の奉納、五色の糸を巻いた大針をこんにゃくに刺す儀式などが見どころです。

所在地 京都府京都市西京区嵐山虚空蔵山町
アクセス 嵐山(阪急線)駅[出口]徒歩7分
公式サイト https://www.kokuzohourinji.com/

 

幡枝八幡宮 針神社(京都府京都市)

日本で唯一針を祀る神社として知られます。

毎年12月8日に針供養祭が開催され、神事の後、こんにゃくに針を刺して供養します。

参拝者にはお神酒や記念品の授与も行われます。

所在地 京都市左京区岩倉幡枝町1118
アクセス 京都精華大前駅[出口2]徒歩9分
公式サイト -

 

 

まとめ

針供養は、役目を終えた針への感謝を示し、裁縫の技術向上を祈願する大切な行事です。

最後に柔らかな豆腐やこんにゃくに針を刺して労をねぎらうその風習から、道具を大切にする日本人の温かな心が感じられます。

 

行事の実施状況や開催時間は事前に各寺社の情報を確認し、参加の際には安全に配慮しましょう。

道具への感謝を改めて感じられる日となることでしょう。

 

また、自宅で針供養をする場合も、豆腐やこんにゃくを用いた方法で気持ちを込めて供養することができます。

心静かに道具に感謝し、さらなる技術向上を祈るひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

-雑学